コラム目次に戻る


年忘れ喜劇まつり

 

 12月23日、新橋演舞場にて、藤山直美さん主演の「年忘れ喜劇まつり」を観てきました。今回は昼の部2本、夜の部2本、合計4本、すべて直美さんが主役を演じて、尚且つ全部お父様である故藤山寛美さんのやっていたお芝居です。
歌舞伎ではこういう仕立ては現在もありますが、普通のお芝居では珍しくなりました。いろいろなお芝居を1日のうちに楽しめるというのは贅沢なことです。しかも私の大ファンである直美ちゃんを朝から夜まで1日中見られるのですから、こんな幸せなことはございません(笑)。でも2部を通しで観ると席料も2倍かかりますが・・・!(笑) 昼の部は1階2列18番(真ん中やや左)、夜の部は1階4列20番(真ん中)、とたいへん良い席で観ることができました。

 昼の部は「夜明けのスモッグ」「浪花の夢・宝の入船」の2本です。
「夜明けのスモッグ」では直美ちゃんが身寄りのないホームレスを演じます。そこに、昔、幼い娘が行方不明になってしまった建設会社の社長さんが、直美ちゃん演じるスモッグを娘と勘違いしてしまい、お屋敷に連れて行きます。そこでお嬢様教育をされるのですが、野放図に育った彼女が馴染めるわけがありません。そのギャップで笑わせてくれます。最後はスモッグ(直美ちゃん)の友達が本当の娘だと判るのですが、社長と本当の娘との親子の情愛を描くと同時に、親を知らないスモッグの悲しさも映し出します。その辺の対比は涙を誘います。また、ホームレスを演じることで、現在の日本の不景気、派遣切りにも通じるお話になるわけで興味深かったです。

 「浪花の夢・宝の入船」は、石屋の父が死んでしまい、母と妹6人を食べさせるために、お兼(直美ちゃん)が大阪にやってきます。そこで米の相場師と出会うのですが、落ち目になった相場師を助けたり、困らせたり、助けたりの行き違いや、お金とお兼の勘違いが笑わせます。直美ちゃん演じる主人公はアホで力持ちなのですが、そのアホ加減、アホのキャラクターの演技は天下一品!お父さんにそっくりです!当時の大阪の世情と人情を味わう意味でも面白かったです。

 夜の部最初が「大阪ぎらい物語」です。4年前に1回観ているのですが、何回観ても面白いです。大正時代、大阪の船場にある木綿問屋の老舗のお話です。
直美ちゃんはその家の長女・千代子。アホかなと思わせるところがあるかと思えば、妙に他人の意表をつくような言を吐いたりして、周囲のものを驚かすような風変りなところはありますが、心根は思いやりのある、優しい娘の役です。
劇の始まりは静かで、「あれっ?こんなんだったかな?これで面白くなるのかな?」という感じでしたが、後見人役である小島慶四郎さんとのやり取りが始まったら、もう笑って、笑って、お腹が痛くなって、涙が出てきて、おかしくてたまりませんでした。そして直美ちゃんの猿のマネは絶品でした。慶四郎さんに「本当にお父さん(寛美さん)に似てきた!」と言われたり、たくましい娘役の直美ちゃんに「この子は絶対風邪ひかへん!」と言われたシーンは大笑いで本当にお腹がよじれてしまいました!(笑)またそのあとが素晴らしい!喧嘩していた母親と仲直りして娘が母を膝枕してあげて子守唄を唄ってあげるのですが、その歌声がスポットライトの中で響き渡り、本当にしみじみとするシーンでした。

 最後が「お祭り提灯」です。業突く張りの金貸しを小島慶四郎さんが演じるのですが、これが本当にこういう奴がいただろうな〜という感じで演じるから面白い!物語は提灯に隠したお金があっちへいったり、こっちへ行ったり、それを追いかけるのに、クタクタになるまでご年配の俳優である小島秀哉さんや曾我廼家玉太呂さんが走る姿が涙ぐましく、笑わせてくれました。最後はアホだと思っていた直美ちゃん演じる三太郎が、捨てられてしまったと思われたお金を実は持っていた、というオチがあり、短い劇でしたが、爽やかに笑わせてくれました。

 イヤ〜、本当に直美さんは達者です。
観る者を引きつけ、笑わせ、泣かせて、感動させてくれます。
こんな俳優が他にどこにいるでしょうか。
もちろん共演の俳優さんも、劇世界の直美さんを生かすために、細やかに演じています。共演者の嘘無い反応・演技があるからこそ、直美さんが活き活きできるのです。70歳を過ぎるであろう小島慶四郎さんがあれほど楽しく舞台を務められてるのを見るにつけ、勇気をいただきます。
藤山寛美の遺伝子は脈々と受け継がれています。
松竹新喜劇の皆さん、本当に楽しい舞台をありがとう!


新橋演舞場入り口付近のポスターの前でご機嫌の川上。

劇場内にあるビデオモニターで映し出される直美さん4変化。