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西洋医学と東洋医学

 現在、日本の医学は、西洋医学が中心です。西洋医学は解剖学から始まり、外科的療法と細菌感染を克服するための抗生物質の発見により世界的に広まりました。また現在は、顕微鏡的検査と体の中を透視する機械によっていままでできなかった治療もできるようになってきました。この恩恵によって人の寿命が延びたのも事実で、素晴らしいと思います。

 しかし反面、西洋医学だけでは対応できない疾患もあり、東洋医学により救われる人達がいるのも事実です。要は西洋と東洋の良い所をうまく使い分ければよいのですが、それがなかなかむずかしいところです。

 その原因はいくつかあるわけですが、第一に、日本が明治以降「西洋医学」を取り入れる際あまりにも伝統医学である「東洋医学」を排斥しすぎたことが挙げられます。そのために免許の必要な「医者」は、先人たちが築き上げてきたものを継承することができませんでした。

 第二に、人体の生理についてのとらえ方が「西洋」と「東洋」では違うため、同時進行で両方を並行して実践していくのは、かなり困難な部分があったということです。西洋医学では、解剖学が理論の中核ですから、どちらかといえば臓器はそれぞれがパーツ(部分)として捉え治療します。しかし東洋医学では、人体を全体性として捉え臓腑はそれぞれが有機的に関連しあっているものとして治療します。たしかに最近は医師も漢方薬を使う機会が増えてきましたが、中には漢方薬を「新薬的」な使い方をしてしまう場合もあります。「新薬的」とは、西洋医学の人体生理観で漢方薬を「病名」に対して使うやりかたです。このやり方は漢方薬が一面的な使われ方をしてしまう恐れがあります。このことは、医師に限った事ではなく一般のくすりやもその傾向にあります。

 そもそも漢方薬は、「病名」に対してではなく、「証」に対応して使います。

 「証」とは、そのお薬を使うにピツタリの体質・症状のことです。つまり、誰もかれも病名がいっしょだから使う薬も同じとは限らないのです。

 第三に、医学が発達した背景が違うということです。西洋医学が発達した欧米は、大陸の気候で狩猟民族なので麦と肉が食の中心です。東洋医学が発達した中国や日本は、雨が多い気候で米や汁を中心とした農耕民族です。したがって体質や病気の出方もおのずと違ってきます。そして実は漢方の故郷である中国の南部と北部でも気候が違うので、使う漢方薬が異なります。また日本と中国でも気候の違いから、漢方薬の使い方が微妙に異なっています。

 そういった知恵を先人達はいろいろな書物で後世に残してくれています。

 私達「薬」を扱う立場の人間は、先人達の残してくれた知恵を生かしながら、現代の日本人に合った漢方薬の使い方および病気の予防法を伝えたり、役立てたりしていく義務があります。それを少しづつでもいいから実践していきたいと思っています。