(5)呼吸器疾患風邪喘息鼻水・鼻づまり


風邪(かぜ)

 「風邪」をひいた時、「西洋医学」では年齢や病因や体質にあまりとらわれないで、抗生物質や解熱剤などの症状を抑える薬を主に使って治療しようとします。それはそれで良い点もあるのですが、妊婦やお年寄りなどには不適当な場合もありますし、熱は一時的に下がるがすっきり治らないとか、かえって胃腸をこわしてしまったというようなこともままあるようです。
 「漢方」では、「風邪」の治療をするとき、その風邪の性質・進行具合・ひいた人の体質・現在の身体情況や症状を鑑みて治療していきます。ですから使う薬は十人十色です。
 したがって、その人に合った薬をきちんと選べば、直ぐ良く効きますし、すっきり気持ちよく治ります。ただ、風邪の進行具合で症状が変わった場合はそれにあわせて薬や治療法も変えていかないといけません。
 ここではひとつの目安として、「いろいろなタイプの風邪」をご紹介します。

急性期

ケース

症状

治療方法

方剤

風寒感冒寒気のあるかぜ  悪寒(ゾクゾクする)、軽い発熱、頭痛、鼻水、首・背中がこる、顔色白い
 脈:浮 舌苔:薄白
辛温解表(温めて汗をかき風邪を追い出す) 桂枝湯、葛根湯、麻黄湯など
風熱感冒のどの痛いかぜ  のどの痛み、発熱、軽い悪寒、熱っぽい、インフルエンザ
 脈:速強
疏散風熱(熱をさましながら風邪を追い出す) 銀翹散、駆風解毒湯など

熱盛期

ケース

症状

治療方法

気分熱盛熱が高い  高熱(38度以上か本人にとって高熱)、発汗、口渇、冷たい水を飲みたがる 清気泄熱・益気生津(熱を冷まして元気と潤い増す)
風熱犯衛裏実便秘と高熱  高熱、便秘、のどの渇き、解熱剤で下がらない
 舌苔:黄色く厚い
辛涼透表・瀉熱通便(熱を冷まして便を出す)
肺熱壅盛熱とせき  高熱、せき、黄色い痰、口渇
 舌質:紅、舌苔:黄色
清肺平喘・止咳(肺の熱を冷まし咳を止める)

移行期

ケース

症状

治療方法

風寒入少陽こじれた風邪  寒くなったり熱くなったりする、微熱、口が苦い、胸脇が脹る、食欲不振、吐き気、めまい感、頭痛 和解少陽(体の内外の調整をしながら風邪を追い出す)
燥邪肺犯から咳と乾燥  から咳、口やのどが渇く、痰が切れにくい、食べたいが食べられない
 舌質:紅、舌苔:渇いて少ない、または半分剥がれている
清熱潤肺(熱を冷まし肺を潤す)

その他

ケース

症状

治療方法

表寒裏飲うすい鼻水・痰  くしゃみ、うすい鼻水、悪寒、軽い発熱、頭痛、鼻閉、うすい痰、咳、ゼーゼー 去風散寒・宣肺・化飲(温めて肺の余分な水分を除き、風邪を追い出す)
表寒裏湿吐き下し  吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、頭痛、発熱、悪寒、舌苔白 去風散寒・化湿(冷えと余分な水分を発散して除き胃腸を助け、風邪を追い出す)
表寒気鬱胃腸が弱い・妊婦  神経質、胃腸の調子が悪い、胃腸が弱い、妊婦、普通のかぜ薬だと胃にくる 去風散寒・理気(気のめぐりを良くして冷えや風邪を追い出す)
気虚感冒高齢者・小児、食欲不振、疲れる  初期から身体がしんどい、食事がまずい、寒気、発熱、鼻水、咳、痰、頭痛、食欲不振・元気がない・疲れやすい人が風邪をひいた 益気解表・理気化痰(元気をつけて風邪を追い出し、気を廻らして余分な水分を除く)
陽虚感冒悪寒が強い  寒気が強い、寒がり、疲れてゴロゴロする、風邪をひいたらなかなか治らない、老人 助陽益気・辛温解表(温めるエネルギーを与えて風邪を追い出す)
血虚感冒産後・月経中  産後、術後、月経中、貧血、筋肉がつる 補血活血・散寒解表(血液を増やして冷えと風邪を追い出す)

風邪は症状が全部当てはまるとは限りません。症状や状態が変化しやすいので、それに応じた治療をすることが大切です。


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咳(せき)

 咳は、肺の病変によって生じます。
 肺は、「矯臓(きゃしゃな臓)」といわれ、ごく軽微な刺激によって咳がひきおこされるほか、「五臓六腑は皆人をして咳せしむ」と指摘されているように、肺以外の病変の影響が肺におよんで咳が発生する事も多いので、原因をよくみきわめて治療する必要があります。
 なお、咳の多くは肺が「痰」などの「異物」を排除しようとする生理的で大切な反射ですから、単なる「咳止め」で止めようとすると、かえって異物を停留させてしまい、病変を持続させたり逆に悪化を招くことになるので、根本的な治療によって咳が自然に止まるようにすべきです。古人が「咳は止むるなかれ」と警告しているのは、この理由によります。

急性の咳

原因:気候や環境の変化に順応できなかったり、ウィルスや細菌の侵襲を受けておきる。

症状

ケース

治療方法

咳、うすい痰、鼻水、寒気 風寒襲表 温肺降逆・解表(肺を温め、余分な水分を除く)
咳、咽痛、熱っぽい 風熱犯肺 疏散風熱・宣肺降逆(熱を冷まし、上逆を降ろして肺の機能を正常化する)
咳、鼻・のどの乾燥感、痰が切れにくい 燥邪犯肺

少し熱っぽい=清宣涼潤(少し熱を冷ましながら潤いをつけて咳を治す)

少し寒気=軽宣涼燥(軽く温めて潤いをつける)

こじれた咳

急性の咳に対し治療が不適切、10日以上続いている。

症状

ケース

治療方法

黄色い痰が多い、胸痛(こども、青年に多い) 肺熱 清肺泄熱(肺の熱を冷ます)
粘っこい痰少し、から咳、痰に血が混じる 肺燥 清熱潤肺(肺の熱を冷まし、潤いをつける)
なまぐさい痰、膿血痰、肺化膿症 肺熱毒 清熱化痰化排膿(肺の熱を冷まし、痰・膿・悪い血を除く)

反復する慢性の咳

慢性の咳は、脾・肝・腎などの内臓の機能不足や飲食不節が関係しています。

余分な代謝産物が邪魔している場合

ケース

症状

治療方法

痰湿(過食過飲  白く切れやすい多めの痰、痰を切ると咳が楽になる腹が張る、むくみ、吐き気
 舌質:白くべっとりとした舌苔
燥湿化痰(余分な水分や痰を除く)
脾虚生痰(胃腸虚弱  白っぽい痰、疲れやすい、食欲不振、食べると腹が張る、泥状便
舌質:白くぼってりしている 舌苔:白
益気健脾・化痰(胃腸に元気をつけて痰を除く)
熱痰(黄色い痰  粘稠の黄色い痰、胸苦しい、口が苦い、腹満
 舌質:黄色くべっとりとした舌苔
 上記2ケースの人が長期にわたるか、熱病を患ったとき
清熱化痰(熱を冷まして痰を除く)
水飲犯肺(水っぽい痰  うすい多量の痰、唾やよだれが多い、鼻水手足の冷え
 舌質:白く水っぽい舌苔
温化水飲・止咳(うすい余分な水分を温めて除いて咳を止める)
肝気犯肺(ストレス・緊張  精神的ストレス緊張によって自律神経の働きが停滞しておこる。 疏肝解鬱・化痰

体(内臓)の機能や栄養物質が不足しておこる場合

ケース

症状

治療方法

肺腎陰虚(老化・から咳  から咳、痰が粘くすこしで切れにくい、または無痰、のどがいがらっぽい、口が渇く、咳き込むとひどい、腰や膝がだるく無力、寝汗、体のほてり、頭のふらつき、耳鳴り、聴力減退
 舌質:紅で乾燥、舌苔は少ない
燥湿化痰(余分な水分や痰を除く)
肺腎陽虚(老化・力のない咳  慢性に続く力の無い咳。動くと咳がでる。足腰が弱い、咳が強いと尿をもらす、夜間頻尿、冷える、寒がる、元気が無い、むくみ
 舌質:淡でぼってりしている、水っぽい舌苔
温補肺腎・止咳(肺や腎を温めて機能を改善する)


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喘息(ぜんそく)

 喘息とは、呼吸が困難になり、ヒューヒュー・ゼーゼーと喘鳴(ぜいめい)を伴う発作を繰り返す病変です。
 西洋医学的には、アレルゲンなどの外因を重視して脱感作を行っていますが、この治療は一面的であるために効果はそれほどではありません。また、ステロイド・気管支拡張剤などは、単に発作を止めるだけで、長期に用いると生体を痛めつける両刃の剣でもあり、また大切な生体の防御反応である痰の喀出反射としての咳も抑制してしまい、根本的な問題である「内伏の痰」を増大させて難治の病態へと追い込む事になります。
 漢方の治療は、根本的な病態の改善によって痰を除き、痰の産生を防止し、気道を開通させるとともに外因に対する抵抗力を高める事を目的とします。

発作時

呼吸困難・ゼーゼー・咳

ケース

症状

治療方法

寒飲阻肺(冷えと水  薄い痰(泡状)、水鼻、水っぽい舌苔、ゼーゼー、冷え 散寒化飲・平喘(温めて余分な冷えと水を除く)
寒飲化熱(薄い痰と口渇  薄い痰、水鼻、水っぽい舌苔、口渇、寒くは無い 清熱化飲・平喘(熱を冷ましながら水を除く)
痰熱阻肺(熱とゼーゼー  黄色い粘っこい痰、呼吸が荒い、黄色く厚い舌苔、ときに便秘、口の乾燥、酒飲みはこのタイプになりやすい、胸が暑苦しい、黄色くべっとりとした舌苔 清熱化痰・平喘(熱を冷まし痰を除く)
痰気交阻(痰と胃腸症状  ストレス・緊張・疲労・風邪ひき・気温の変動などで誘発される、白く粘稠な痰、食欲が無い、泥状便、食後腹満、呼吸困難、舌苔が白っぽい 理気化痰・平喘(気のめぐりを良くして痰を除く)

緩解期

ケース

症状

治療方法

脾虚生痰(胃腸の機能不足  白い痰、元気がない、疲れやすい、食欲があまりない、腹がすかない、便がやわらかい、排便の回数が多い、甘いものが好き
 舌質:淡 舌苔:白い
益気健脾・化痰(胃腸を元気にして痰を作らない)
水飲内停(水分代謝不足  薄く白い痰、元気がない、疲れやすい、寒がる、冷える、食欲不振、腰や膝がだるく無力、むくみ、夜間頻尿
 舌質:淡ではれぼったい
温補脾腎・化飲利水(脾と腎を温めて、水はけをよくする)
肺腎陰虚(潤い不足・年配の女性  粘稠で切れにくい痰、皮膚・のど・口の乾燥感、ほてり、足腰が弱くなった、寝汗
 舌質:紅で乾燥 舌苔:少ない
滋腎潤肺・化痰(腎と肺の潤いを増して、痰の濃縮を防ぐ)
痰熱伏肺(酒飲み・美食家  胸苦しい、口が粘る、口が苦い、いらいら、腹満尿が濃い、便がすっきり出ない
 舌質:黄色くべっとりとした舌苔
清熱化痰(熱を冷まして痰を除く)

発作時と緩解期は、言ったり来たりする場合や、その中間の症候もありますので、症状や体質に合わせて臨機応変に治療することが大切です。


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鼻水・鼻づまり

 鼻水・鼻づまりは、急性のものと慢性のものがありますが、急性のものは「風邪」の項をご覧下さい。ここでは反復性・慢性のものをとりあげます。

ケース

症状

治療方法

肺胃薀熱(蓄膿症  慢性で黄色・膿性で臭気のある鼻汁・鼻づまり、頭や鼻根部に脹った痛み、臭覚の低下、のどの渇き
 舌質:紅 舌苔:黄
清熱瀉火(熱や炎症を冷ます)
脾陽不足(水っぱな  冷え・疲労・飲食によりうすい鼻水、鼻づまり、くしゃみ、食欲不振、腸のグル音、疲れやすい、元気がない、四肢の冷え
 舌質:淡
温中健脾・化飲(胃腸を温め元気にして余分な水分を除く)
腎陽不足(寒がり  冷えや気温・気候の変動によるうすい鼻水、寒がる、四肢の冷え、根気がない、腰や膝がだるく無力
 舌質:淡でぼてっとしている 舌苔:水様
温補腎陽・利水(腎を温め助けて水はけをよくする)
熱飲(のぼせ  気温・気候の変動によるやや粘稠な鼻水、強い鼻づまり、くしゃみ、目の充血、のぼせ
 舌質:紅
清熱利水(熱を冷まして水はけをよくする)
肝鬱気滞(ストレス  季節の変わり目に(春、秋)鼻づまり、鼻水、くしゃみ、ストレスを抱えている、いらいら、憂鬱、怒りっぽい、緊張 疏肝理気(自律神経の流れをよくして内臓の働きのバランスを整える)
脾陰虚(鼻の乾燥感  鼻水がでない持続性の鼻づまり、乾燥感、手足のほてり、食欲不振、口・唇の乾燥
 舌質:紅 舌苔:少ない
滋補脾陰・補気健脾(脾の潤いと元気をつける)
腎陰虚(鼻の乾燥感  鼻水がでない持続性の鼻づまり、乾燥感、手足のほてり、のぼせ、体の熱感、少量の鼻出血、耳鳴り、腰や膝がだるく無力 
 舌質:紅 舌苔:少ない
補腎益精・清虚熱(腎の潤いと根源物質を増やし熱を冷ます)
血流が悪い  持続性の鼻づまり、夜間に増悪、臭覚の減退
 舌質:紫暗、黒っぽい斑点が現れることが多い
活血化(悪い血を除いて血流をよくする)


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