(6)神経症・心疾患不眠いらいらめまい・耳鳴り不安感動悸胸痛


不 眠

 不眠とは、満足すべき睡眠がとれないと自覚することです。
 睡眠時間が非常に短くても本人が満足していれば不眠ではなく、逆によそ目にはよく眠っているようにみえても本人が不満であれば不眠です。
 眠りの障害には、寝つきが悪くてなかなか眠れない・睡眠が浅くてすぐに目覚めてしまう・夢ばかりみて寝た気がしない・睡眠時間が短くて朝早く目覚めてしまう・終夜一睡もできないといったさまざまな程度があります。
 五臓の一つである「心」は火臓で陽に属し、意識は心神が主っています。太陽が天にあって陽気が盛んな日中は、心神が活発で意識が清明であり眠ることは少なく、太陽が沈んで陰気が盛んになる夜間には、心神が安静になって意識は沈潜し眠りにはいります。安静になるべき夜間に何らかの原因により心神が乱されると、不眠が発生します。

急性の不眠

なかなか寝つけない、眠っても夢をよくみる、すぐ目覚める

ケース

症状

治療方法

心火(胸が暑苦しい  悶々とする、胸が暑苦しい、焦燥、動悸、口が苦い、舌突が痛む、口内炎、舌突:紅 清心安神
肝鬱化火(ストレス  いらいら、あれこれ考えてしまう、怒りっぽい、目の充血頭痛、耳鳴り、胸脇が脹って苦しい 清肝解鬱・安神
胃気不和(食べ過ぎ・飲みすぎ  腹満、ゲップ、腹痛 消食和胃

慢性・反復性の不眠

ケース

症状

治療方法

心陰虚(心臓の栄養不足、年をとると共にだんだん不眠になってきた  寝つきが悪い、眠りが浅い、目が覚めやすい、夢をよくみる、動悸、顔面のほてり、舌質:紅 舌苔:少ない 滋陰養血・安神(心の血液・潤いを増やして、神経を安定させる)
心腎不交(入眠困難  眠ろうとしても夜通し眠れない、動悸、熱感、脚や腰が弱った感じがある 清心火・滋腎陰(心の熱を冷まし、腎の栄養を育む)
痰熱擾心(飲酒・飲食不摂生  寝つきが悪い、良く夢をみる、痰が多い、口が苦い、吐き気、舌苔:黄厚い 清熱化痰(熱を冷まして痰を除く)
肝鬱血虚(ストレス・更年期  いらいらして寝つけない、眠りが浅い、すぐに目が覚める、怒りっぽい、憂鬱、ため息、顔色につやがない、胸脇が脹って苦しい、月経不順 疏肝解鬱・養血安神(自律神経の働きをなめらかにして、血液を増やし、神経を安定させる)
心脾両虚(胃腸が弱い・貧血  寝つきはいいが眠りが浅い、夢をよくみる、目が覚めやすい、顔色につやがない、動悸、食が少ない、疲れやすい、舌質:淡〜淡紅 益気健脾・養血安神(胃腸の元気をつけて血液を増やし神経を安定させる)


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いらいら

急性のいらいら

ケース

症状

治療方法

焦燥感・いても立ってもいられない  動悸、不安、胸が暑苦しい、不眠、口内炎、舌突がしみるように痛む、脈速い 清心安神(心の熱を冷まして神経を安定させる)
いらいらして怒りっぽい・ヒステリックな反応  胸脇部が脹って痛む、頭痛、耳鳴り、口が苦い、舌突辺が紅、脈:弦を張った 清肝瀉火・安神(自律神経の興奮を冷まし、神経を安定させる)

慢性・反復性のいらいら

ケース

症状

治療方法

不眠・痰・吐き気  いらいら、不眠、驚きやすい、動悸、痰が多い、胸苦しい、めまい、吐き気、嘔吐、黄色くべっとりとした舌苔 清熱化痰(熱を冷まし痰を除く)
不眠・のぼせ・ほてり  いらいら、不眠、焦燥、からだの熱感、のぼせ、ほてり、口の乾燥、寝汗、腰や膝がだるく力が入らない、舌質:紅 舌苔:少〜無 滋陰降火(腎の潤い・栄養をふやし、熱を下に降ろす)


めまい・耳鳴り

 めまいとは、静止している周辺の景色や物体が揺れ動いたり回転するように見えたり、自分の体がふらついたり目がかすんで安定しないことをいいます。
 激しい回転性のめまいで嘔吐したり意識を失うような重症(メニエール症候群)から、立ちくらみ程度の軽症まであり、長年にわたり反復するものや一過性のものもあります。

強いめまい

ケース

症状

治療方法

痰濁上擾(回転性のめまい  吐き気、嘔吐、食欲不振、腹満、からだが重だるい、耳鳴り(せみがジージー)、頭重、軟便、舌苔:白く厚い 息風化痰・健脾去湿(痰を除き胃腸強化)
痰熱上擾(酒飲み・不眠  吐き気、嘔吐、いらいら、口が苦い、舌苔:黄色厚い、耳鳴り(つまった感じ) 清熱化痰(熱を冷まして痰を除く)
肝陽化風(激しいめまい  ふらつき、のぼせ、頭痛、耳鳴り(突然)、いらいら、怒りっぽい、顔面紅潮、目の充血、口が苦い、舌質:紅 清肝息風(自律神経の熱を除き働きをスムースにする)
陰虚陽亢(フワフワめまい  目の乾燥感、皮膚・口の乾燥、のぼせ、ほてり、寝汗、ふらつき、焦燥感、舌質:紅 舌苔:少ない、更年期に多い、耳鳴り(音は小さいがいつも鳴る) 滋陰潜陽(潤い栄養を増して機能亢進を静める)

めまい感・ふらつき

ケース

症状

治療方法

気虚下陥(疲れやすい人の立ちくらみ  立ちくらみ、動くとふらつく、疲労時におこる、疲れやすい、座りたがる、食が進まない 益気昇精(元気をつけてエネルギーを上に上げる)
血虚(貧血  首を動かしたり、からだを動かすとクラッとなる、顔色が悪い、頭がぼんやりする、目のかすみ・乾燥感、爪の色が白かったり弱い、四肢のしびれ 益気養血(元気をつけて血液の栄養を養う)
腎精不足(年配の方  持続する頭のふらつき・めまい感、思考力減退、耳鳴り、もの忘れ、目のかすみ、腰や下肢がだるく力がはいらない イ)冷え・寒がる→補腎益精・温陽(腎の精を増し温める)
ロ)ほてり・のぼせ→補腎益精・清虚熱(腎の精を増し熱冷ます)
水飲阻滞(胃チャポチャポの人  水分を取りすぎるとふらつく、胃がチャポチャポ音がする、むくみ、吐き気、軟便、舌が濡れている、舌がぼてっとしている) 温陽利水(水分代謝をよくする)
阻滞(ガンコな頭痛・肩こりのあるひと  頭痛、肩こり、目のまわりの隈、唇や舌が暗い色、静脈瘤、子宮筋腫など 活血化(悪い血を出して血の流れをよくする)


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不安感

 「不安感」は、いろいろな症候のなかで出てきます。西洋医学的な治療では、安定剤・抗鬱剤・催眠導入剤などを使用します。一時的に不安感が取れるので患者さんは助かるのですが、根本治療にはなっていないので長期にわたり薬を服用することが多く、そのことで逆に心配してしまうケースもあるようです。
 漢方では、不安は「心」や「肝」・「胆」や「腎」の問題と考えて、それを改善することによって基から治療していきます。また、精神的なケアも大切です。

漢方でいう「心」とは、もちろん「心臓」のことも指しますが、「精神活動」(大脳の働きの一部)にも関係してきます。
「胆」は「肝」と密接な関わりをもち、自律神経に影響をおよぼします。「きもを冷やす」とか「きもが小さい」などと関係しています。
「腎」とは、「腎臓」としての働きと、「髄」に繋がるもの(脳髄)として精神活動に関係しています。

1、心に原因がある場合
 
「心」に関係する不安感は、「動悸」や「胸痛」を伴うことがほとんどです。伴う方は「動悸」または「胸痛」の項目をごらんください。そこで違うと思った方は下記の3をご覧下さい。
2、胆に原因がある場合
 
「胆」に関係する不安感は、頭がフラフラしたり、気が小さく、物事に驚きやすく、心配症で、不眠をともなうことが多いです。
 また、胃下垂や胃アトニー(胃の機能不足)などの内臓がゆるんだ体質の人が、吐き気・嘔吐、めまい、優柔不断、決断力がない、驚きやすい、夢をよく見る、動悸、息切れ、汗をよくかくなどの症状を現す場合もあります。
 
治療方法:温胆化痰・清熱安神(余分な痰や水分・熱を除き、胃腸や肝胆の機能を改善して精神を安定させる)

3、肝(肝と心、肝と腎)に原因がある場合
 
「肝」は自律神経の働きといえばわかりやすいです。「肝は血を蔵す」といって、栄養のある血液を貯えることでキチンと働けます。しかしストレスがはいると影響を受けやすいところです。
 したがって、月経や出産をしていく女性は血液不足になりやすいので、ちょっとしたストレスがはいるだけで神経が不安定になりやすいのです。最近話題になっている「パニック障害」もこの範疇にはいるとおもわれます。また「更年期」になると、ホルモンバランスの崩れの影響が出てきて不安感を感じる場合もあります。

 症状:パニック状態が一時的におきる(不安感、激しい動悸、発汗)普段はなんでもない
 治療方法:疏肝解鬱・理気・益気補血(元気や血液を増やして自律神経の働きをスムースにする)



 症状:でかけるのが不安、バスや電車に乗るのが不安、人と会うのが不安、家では普通
 治療方法:滋陰補血・安神(潤いや血液を増やして精神を安定させる)

4、腎に原因がある場合
 生命の根元物質を漢方では「精」といい、生命の種火を「命門の火」といいます。この2つは「腎」に貯えられ、人間の生命活動を支えているわけですが、年齢を経るにしたがって磨り減っていきます。一方「腎」は、「髄」(脊髄・延髄・脳髄)につらなっていると考えます。したがって年をとるにつれて「髄」に運ばれるべき生命活動の栄養物質やエネルギーは不足をしていく運命にあるわけです。
 「ボケ」や「アルツハイマー病」もこれに関係していると考えられます。人によって個人差はありますが、老化により「不安感」がおきるのは、ある意味で言えば避けられないのかもしれません(老人性うつ病など)。
 しかし、予防医学が発達した漢方では、老化の進行をゆっくりさせる薬もあるのです。

 症状:腰や脚が弱くなった、ふらつき、小便が近い、尿をもらすことがある、元気がない、寒がりまたは暑がり、不安感、憂鬱、お金が無いとか着るものがないとか無駄な心配をしている
 治療方法:補益腎陽・補益腎陰・補益気血(からだ全身に元気と栄養をつける)話し相手になってあげる


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動 悸

 動悸とは、心臓の拍動を自覚することであり、多くは不安感をともなっています。
動悸を自覚する場所は、心臓部が最も多いのですが、心窩部・臍下などのこともあります。一般に「心悸」と称され、「驚悸」と「征仲」に区別されます。
 驚悸とは、驚き・恐れ・不安・情緒変動・疲労などがきっかけで生じる動悸で、経過がそれほど長くはなく、一時的なものです。
 征仲とは、明らかな外因がなくて持続する動悸で、労作時に増強するものです。驚悸は軽症で??は重症であり、驚悸が反復すると次第に??に移行します。心神不安の一症状ですが、原因はさまざまです。一般には正気の不足あるいは臓腑の虚損などの虚証が主体であり、治療は補法が基本になります。

ケース

症状

治療方法

心血虚  動悸、焦燥、不眠、物忘れ、驚きやすい、元気が無い、疲れやすい、食欲が無い 舌質:淡 滋養心血・安神(心血を増やして精神安定)
心陰虚  上記の症状に加え、からだの熱感、手足のほてり、ねあせ、口の乾燥 舌質:紅で乾燥 舌苔:少ない〜なし 滋養心陰・安神(心の血液の栄養・潤いを増やして精神安定)
心気虚  動悸と脈の結代、運動にともなう動悸や狭心痛、元気がない、疲れやすい、汗が出る 補気安神(心気を増し精神安定)
心陽虚  上記の症状に加え、寒がる、四肢の冷え、横になっていたい、うとうと 温陽安神(陽気を増し精神安定)
水気凌心  頻繁な発作性の動悸、疲労・冷えなどで誘発、疲れやすい、元気がない、食欲不振、うすい痰、めまい、むくみ、尿量が少ない、寒がる、四肢の冷え 舌質:淡 舌苔:水様 温腎補陽・健脾利水(腎を温め胃腸の元気をつけいらない水をさばく)
痰濁擾心  動悸、胸苦しい、痰が多い、腹満、食欲不振、吐き気、嘔吐、べっとりとした舌苔 理気化痰(気のめぐりを良くしていらない痰を出す)
痰火擾心  上記の症状に加え、焦燥、黄色い痰、黄色い舌苔 理気化痰・瀉火(気のめぐりを良くしていらない痰を除き熱を冷ます)
血脈  動悸と心痛、口唇が青紫色、舌質:青紫色 活血化(悪い血を除いて血のめぐりをよくする)


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胸 痛

 胸痛とは、胸の中央から前胸部にかけての痛みです。心・肺のニ臓の病変で発生し、重篤な場合には生命の危険にもつながるので、注意が必要です。
 激しい疼痛が生じて冷や汗・口唇が青紫などを呈する場合には、安静にした上、救急車を呼ぶべきです。現代医学的にいうと狭心症や心筋梗塞にあたります。

急性(実邪)

ケース

症状

治療方法

気滞(はったような胸痛・情緒の変動とともに痛みが発生  時により痛む場所が違う・イライラ・憂鬱・ヒステリックな反応・胸や腹が脹って苦しい・ため息 疏肝理気・止痛(気のめぐり・自律神経の流れを良くして痛みを止める)
寒擬(はげしい締め付けられるような・寒冷によって痛みが発生  痛みが背部に放散、寒がる、四肢の冷え、冷や汗、顔面蒼白、口唇の蒼白 舌質:藍色・水っぽい舌苔 散寒通陽・活血(冷えを除き陽気をめぐらして滞った血液の流れを良くする)
痰湿阻滞(胸苦しい・持続性の鈍痛  痰が多い、体が重だるい、食欲不振、白くべっとりとした舌苔 化痰去湿・通陽(働きのない余分な水分を除き陽気をめぐらせる)
痰熱阻滞(上記の症状に灼熱痛・胸やけ  黄色く粘調な痰、口が粘る 舌質:紅 黄色くべっとりとした舌苔 清化痰熱・寛胸(余分な粘調な水分を熱とともに除き気血の流れを良くする)
激しい固定性の刺すような疼痛  冷や汗、強い動悸、口唇が青紫 舌質:紫暗あるいは黒っぽい斑点、脈が渋る 活血化・通脈止痛(汚れたドロドロの血液を除き血の流れをスムースに)

慢性・反復する(虚)

ケース

症状

治療方法

心気虚(疲れや運動によって発作あるいは痛みが増強  疲労倦怠感、息切れ、動悸、不安感、冷や汗、舌質:淡、脈:弱い 補益心気(心の元気をつけて楽にしてあげる)
心陽虚(上記の症状に寒がる・冷える  寒冷により胸痛が増強 舌質:淡でぼってり大きい 補益心陽(心の元気と温めるエネルギーを増やしてあげる)
心陰虚(灼熱感・動悸・不眠  焦燥感、不安感、舌質:紅で乾燥 舌苔:少ない 滋補心陰(心の血液・潤いを増やしてオーバーヒートの熱を冷ます)
心気陰両虚(機能と栄養不足  上記の症状に疲労倦怠感、息切れ、脈が弱い 益心気・益心陰(心の元気と潤い・血液の両方を増やして心を応援する)


◆神経症・心疾患項目◆不眠いらいらめまい・耳鳴り不安感動悸胸痛

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