漢方の歴史は、伝染病・感染症との戦いの歴史。
新型コロナウイルス感染症と漢方
新型コロナウイルス感染症対策
漢方薬での新型コロナウイルス感染症に対する対応を考えます
予 防
生体の防御機能(免疫力)を高めることが大切です。
漢方では昔から感染症に対してたゆまぬ研究と臨床を重ねてきました。人体には「気」というエネルギー、機能が存在します。
気の働きは次の5つです。
①推動作用(全身に気血津液精)を送る②温煦作用(体を温める)③防御作用(外敵から体を守る)④固摂作用(体液などが漏れないようにする)⑤気化作用(物質を変化させて代謝させる)
このうちの③防御作用は気血を補うことで強化されます。代表的な方剤としては「補気健脾」「補血」作用のあるものです。これらを普段から服用しておけば徐々に免疫力は高まり、感染しにくいまたは感染しても重症化しにくい体を作ることができます。
かかってしまった場合
症状によって対処法が微妙に異なります。
1)だるい、味や臭いがしない
感染症にかかりかけた初期と思われます。邪が少陽に侵入したと考え、「和解半表半裏・解表」作用のあるものなどを使用します。
2)のどが痛い、熱が出だした
邪が風熱として侵入したと考え、「辛涼解表・清熱解毒」作用や「和解半表半裏・清熱透表」作用のあるものなどを使用します。
3)発熱悪寒、胸隔部の閉塞感、舌苔が白く厚くべっとり
湿熱疫が膜原にこびりついたときは、「芳香化湿・理気和中」や「化痰清熱」作用のあるものなどを使用します。
4)高熱、はげしい咳、痰、呼吸困難
肺炎に相当します。ぜんそく用の方剤を使用します。「清肺平喘」「止咳・清熱」作用のあるもの、「温肺化痰・平喘止咳利水」作用のあるものや「桔梗石膏」などを使用します。
5)胸部の閉塞感が強い、胸部の痛み
肺に痰がこびりついて呼吸が苦しくなっている状態です。「浄痰化痰」「理気活血」作用のあるものなどを使用します。
状態に応じてどう使い分けるか
※コロナ肺炎にたいしては、上記の処方等を上手に組み合わせて症状に応じて対処していきます。
中国や台湾では、「清肺排毒湯」という名前で、軽症、中等症、重症患者に幅広く処方され、改善に役立ったようです。
中身は上記の処方を4~5種類合方したような内容です。たとえば重症の肺炎患者には、「麻杏甘石湯」+「射干麻黄湯」+「柴苓湯」+「霍香」+「枳実薤白半夏湯」みたいな感じです。
これに上記の症状を見ながら、足したり引いたりしながら状態を改善するように調整していきます。
血栓症が心配な場合や痰がこびりついてしまった時は「化痰薬」と「理気活血化於薬」を足していきますし、肺炎による咳がひどい場合は「桔梗石膏」を足していく、というような感じです。
いずれにしても感染してしまった場合は入院になります。しかし、隔離施設に入所したり、病院で特別な治療法がない場合は、漢方薬を試す価値は充分にあると考えています。